2008年9月20日

左肺静脈・・・

 肺に見つかる悪性腫瘍は大きく分けて、原発性肺癌と転移性肺腫瘍の2種類あります。手術としては、原発性肺癌に対しては「葉切除+リンパ節郭清」であるのに対し、転移性肺腫瘍に対しては、「部分切除」を行うのが標準と思われます。

 転移性肺腫瘍の手術とはいっても、転移する場所により、やむを得ず「葉切除」になることがあります。肺の血管・気管支の中枢(心臓に近いところ)に転移した場合で、腫瘍を切除することにより、その末梢の肺への血流・含気を維持できなくなる場合がこれに当たります。

 左肺上葉の舌区(下・前)に3cm大の転移性腫瘍があり、肺静脈に接する症例がありました。術前のCTを見ると、上葉の肺静脈が下葉の肺静脈に流入し、共通管となって左心房に注ぎます。腫瘍は上肺静脈と下肺静脈の流入部にあり、ぎりぎり取れるか?との診断をいたしました。

 術中所見は図に示したとおり、上肺静脈のV1, V3は合流した部位で切離可能でしたが、その下の腫瘍と肺静脈は強固に癒着していました。肺静脈本幹にテープを通し、微速前進でちょびちょび剥離を進め、時間はかかりましたが、何とか剥離できました。ひゃ~。

2 件のコメント:

Ns.Sheep さんのコメント...

はじめまして。
肺の手術、特にVATSはかなり不得意なOPナースです。食わず嫌いということもあり…。

このブログは興味深く拝読させていただいております。

あつかましいお願いなのですが器械出し看護師向けに『VATSの器械出しの奥義』などというタイトルでの記事をリクエストします。


http://cahier.blog.eonet.jp/default/

kazuhiroITOいとうかずひろ さんのコメント...

Ns. Sheep様
 伊藤でございます。コメントありがとうございます.
器械出しについては,私も素人ですので・・・偉そうには言えませんが、欲しい道具が手のひらに「ぴしっ」ときた時には気が引き締まります。その繰り返しが「手術のリズム」を生み,引き締まったリズムが適度な緊張感を与え,手術がうまく行くのではなかろうかと思っています。

 「奥義」については,手術室のナースに聞いてみます。面白いネタがあれば,また、公開いたしますのでよろしくお願いいたします。